こんにちは、買い取り担当者の長尾です。
今回は三代 清水六兵衛とその師小田海仙の合作茶碗をご紹介いたします。
私は地元ということもあり、京焼の作品がとても好きなのですが、数入る京焼き陶工の中でも江戸中期から今日まで続く、陶家清水六兵衛の作品、特に初代から四代の江戸期から明治期にかけての作品には、特に心惹かれるものがあります。
このお茶碗は三代 六兵衛の作であり小ぶりな形状から野点茶碗だと思います。その作域は轆轤(ろくろ)手で、釉薬は御本となっており、初代、二代を踏襲した伝統的な造りとなっています。
そして、絵付けには三代 六兵衛の絵の先生であった南画家の小田海仙が、鉄(釉薬)絵で稲穂の絵を生命感あふれる見事な筆致で書き上げています。 また、茶碗の見込みを見てみると「寿」の一字が書かれています。
大田垣蓮月と富岡鉄斎の師弟作品は稀に見ますが、この師弟の作品はあまり見かけず大変珍しいものです。共通の知人の何かのお祝いに合作した物なのかも知れませんね。
作品には「七十翁海仙(海仙花押)」とあり、これにより、海仙七十才、六兵衛三十六才の時の作品で、また、1855年安政二年に作られた物という事がわかります。
六兵衛三十六才。もう腕にかなりの自信をつけた頃だったと思いますが、自分の造った物に先生に絵付けをしてもらうと思ったら、かなり緊張して造ったのかな・・とか思い眺めています。 こうした背景的な事も感じられるのも、このお仕事ならではですね。 最後に箱書きは三代 六兵衛から見て、孫に当たる五代六兵衛が昭和8年初秋に祖父三代六兵衛の作に相違ないと極めています。