◼️中川浄益(なかがわ じょうえき)
中川 浄益(なかがわ じょうえき)は千家十職の一つ、金物師(かなものし)の中川家当主が代々襲名する名称です。元々は越後国で甲冑・鎧を作っていたが、茶道具を初めて手掛けた初代・中川與十郎が紹益を名乗り、二代目になると公に千家出入りの金物師となったが、紹益という名は当時の豪商、佐野紹益と紛らわしく不都合を生じるようになったため改名、このときから浄益と名乗るようになった。二代目浄益以降の当主は浄益という名を継いでいます。2008年に十一代浄益が87歳で死去したあとは現在当主は空席となっている。
三代は歴代の中でも鋳物の名手として知られ、砂張製法という胴、錫、鉛の合金を使った鋳造が非常に難しい技法を発明、そして確立し、数々の名作を残しました。
中川家は錺師とも言われ、金工の精巧な茶道具を得意とし、優れた金工の技術を継承してきた。その作品は鉄を鍛造して制作する槌物と鋳造による鋳物が主です。
初代 紹益(紹高:1559年 – 1622年)
越後出身。元は先祖と同じく武具を製作するが、千利休に薬鑵(やかん)を依頼され、得意の打物(うちもの)の技を生かして作ったのを機に、現在の家業である茶道具作りを始めたとされる。代表作「利休形腰黒薬鑵」。
二代 浄益(重高:1593年 – 1670年)
寛永年間に千家出入の職方となる。表千家四代江岑宗左より、豪商佐野(灰屋)紹益と名前が紛らわしいことから浄益に改めるよう申しつけがあり、これ以降は代々「浄益」を名乗る。また、妻は金森重近(宗和)の娘。
三代 浄益(重房・長十郎のち太兵衛:1646年 – 1718年)
技術的に困難であった砂張(さはり:銅・錫・鉛の合金)の製法を発見して多くの名品を残す。歴代の中でも鋳物の名人として知られる。
四代 浄益(重忠のち友寿・源吉:1658年 – 1761年)
3人の息子に恵まれ、息子達と共に家業の隆盛に励む。
中川源介友忠(1685年-1759年9月4日)代表作「覚々斎好渦唐金水指」。父の長命のため、跡を継げないまま没。
五代 浄益(頼重・源吉、吉右衛門:1724年 – 1791年)
四代の三男。この代から代々「吉右衛門」を名乗りとする。表千家八代・啐啄斎に重用される。晩年に天明の大火に遭い、過去帳1冊以外のすべての家伝・家財を消失。
六代 浄益(頼方:1766年 – 1833年)
五代の息子。啐啄斎の機嫌を損ね、一時表千家出入りを禁じられ、その後は裏千家のみの御用を務める。了々斎の代になって許される。歴代中随一の茶人であり、「宗清」の茶名を持っていた。
七代 浄益(頼実:1796年 – 1859年)
「砂張打物の名人」「いがみ浄益」といわれ、天明の大火以後様々な事情でふるわなかった中川家の中興の人物といわれる。妻は飛来一閑三女・九満。
八代 浄益(幾三郎:1830年 – 1877年)
七代の婿養子。三井家手代・麻田佐左衛門の息子、妻は七代の娘・戸代。幕末~明治の転換期に先を見通し、京都の博覧会の開催に尽力。また「浄益社」を設立、海外への日本美術の紹介を行うなどするが、様々な事情により失脚。失意の中48歳で没。
九代 浄益(益之助・紹芳:1849年 – 1911年)
八代の息子。茶道衰退期に家督を相続。父方の縁により三井家などから援助を受けるが、家業の建て直しがうまくいかず、逆境の中アルコール使用障害となる。職人としては一流であったが、伝統工芸に理解のない時代だったため世間からは認められなかった。不遇のまま没。
九代 浄益造「南鐐茶入 八宝彫」
十代 浄益(淳三郎・紹心:1880年 – 1940年)
九代の息子。早くから大阪の道具商のもとに修行に出される。父の死により家督を相続。第一次世界大戦勃発による軍需景気にのり負債を完済、中川家再建の基盤を作る。
十代 浄益造 「筋キセル」
十一代 浄益(紹真:1920年 – 2008年)
十代の息子。1940年に父の死後、浄益を襲名した。2008年死去。
千家十職一覧
[茶碗師] 樂吉左衛門 | [釜師] 大西清右衛門 | [塗師] 中村宗哲 | [指物師] 駒沢利斎 |
[金物師] 中川浄益 | [袋師] 土田友湖 | [表具師] 奥村吉兵衛 | [一閑張細工師] 飛来一閑 |
[竹細工・柄杓師] 黒田正玄 | [土風炉・焼物師] 永樂善五郎 |
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